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【レースな世界紀行2004】その13の1 [レースな世界紀行 2004]

鈴鹿関連の原稿を書いていて、ふと思い出したのでアップします。でも読み返してみたら、鈴鹿の話じゃない(汗)。

その13の1
F1第17戦日本GP
日本・鈴鹿

「日本グランプリは地元レースだから、イベントごとや取材が多くて忙しい」と片方で言っておきながら、「和田金でごちそうします」と誘いを受ければ、そそくさと仕事を片づけて駆けつけるのだから、現金なものである。

秋雲がたなびく木曜日のことだった。BMWジャパン広報部から、「マリオ・タイセンを囲んで食事をしませんか?」との誘いを受けたので、間髪入れずに出席の返事をした。BMWモータースポーツ・ディレクターの肩書きを持つタイセンさんは、エンジンの開発におけるリーダーである。そんな彼から貴重な意見を拝聴できる魅力は確かにあったが、タイセン氏を囲むのが、松阪牛で有名な和田金だったから喜んで誘いに応じたのだろうと詰め寄られても、強固に否定することはできない。

仕事の忙しさはどこへやら、夕食会の時刻が近づくにつれ、腰が落ち着かなくなる。
「松阪に6時だろ? てことは、遅くても5時に出ないと間に合わない。そろそろ準備したほうがいいんじゃないか」
と、そわそわしだしたのが4時頃のことであった。同行の士が僕の他に3名いた。そのうちのひとりが名案を出す。
「クルマで行くと渋滞にはまる。電車で行ったほうがいいんじゃないか」
「そうだ。白子から近鉄に乗れば1時間で行ける」
すかさず、ケータイのサイトで時刻表を調べたのは僕である。
「そんな、わざわざ電車で行くことないでしょ。クルマで行きましょうよ」
と、クルマにこだわる者がひとり。
「いや、国道は混雑して使い物にならない。電車だ」
「慌てていくことないでしょ」
「いや、間に合わない。それに、酒飲んだら帰りどうするんだ」

なんだかんだとやりとりしているうちに5時になった(仕事はどうした?)。近鉄・白子駅で540円也の切符を買い、電車に揺られて1時間とちょっと。大の大人が4人で松阪牛をごちそうになりに、松阪駅までやってきた。やってきたはいいが、駅からの道がわからない。わからないなら、道行く人に聞けばいいという寸法で、構内を歩く御婦人をつかまえて、「和田金はどこです?」と恥も外聞もなくたずねた。

とっぷりと日の暮れた松阪の街を、大の大人が4人、松阪肉食べたさに歩いて和田金へ。会食開始の時刻を15分も遅れて着いてみれば、タイセンさんはもちろん、BMWジャパンの関係者は誰ひとり到着しておらず、だだっ広い座敷に冷えた空気が漂っているのみ。主を待つ座布団がもの悲しい雰囲気を醸し出す。

座敷の片隅で15分ばかりかしこまっていると、BMWご一行様が到着した。床の間を背負ってタイセンさんが座る。
「タイセンは日本の肉が好きでしてね。昨年の鈴鹿で私は3日間しゃぶしゃぶ付き合わされまして。参りました」
と、広報部のIさんが言う。参ったとは、おいしくておいしくて参ったということだろうかと邪推。
「で、今回は松阪肉を食べてもらおうと。さ、どうぞ囲んでください」
言われるまでもなく、日本の肉ファンのタイセンさんをはじめ、3つの円卓に分かれた一同はみな、卓の中央を占める鍋に視線を向けていた。タイセンさんの挨拶。

「ええ、去年の鈴鹿は毎日しゃぶしゃぶでした。松阪牛の網焼きやすき焼きは初めてです。鈴鹿には5回、東京モーターショーには2回来ていますが、観光する機会はありませんでした。今度は妻を連れてゆっくりしたいですね」

そう語る普段着のタイセンさんは、あぐらをかいて座る右手にデジカメを置き、シャッターチャンスを逃すものか、と事の成り行きを注意深く見守っていた。仲居さんがやって来て、炭に火を入れる。すかさずタイセンさんはデジカメのスイッチを入れ、シャッターを押す。色とりどりの野菜が載った皿が来れば写真を撮り、肉が来れば肉の写真を撮り、仲居さんが鍋に野菜をくべればまた写真、肉をくべればさらに写真と慌ただしい。

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野菜をくべたり肉をくべたりする合間に、仲居さんは、「ウチの肉は自家農場で育てています。3000頭飼ってます」とか、「こちらにお出しするのはすべて雌牛の処女さんなんです」と自慢話をしたり、「牛の食欲増進のためにビールを飲ませるんですよ。体は焼酎で洗うんです」とうんちくを語ったりし、同席した通訳がドイツ語に翻訳してタイセンさんの耳に入れるが、主役はただただ無心に肉を頬張っては「ファンタスティック」を連発するのみであった。

半人前(65グラム)の網焼きと半人前のすき焼き(合わせて1人前)、それに数々の野菜を平らげたタイセンさんであったが、お腹が満足しなかったとみえて、すき焼きを半人前追加した。同じテーブルを囲んでいた僕らもご相伴にあずかることになり、得をした。食べ終わったタイセンしは、ぷっくりふくらんだお腹を見せて、「妊婦です」とジョークを言った。(つづく)

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