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【検証】アウディR18 e-tronクワトロ・2016年仕様 [モータースポーツ]

2016年のル・マン24時間と、ル・マンをシリーズの一戦に含むWEC(世界耐久選手権)に参戦するアウディの最新マシン、R18 e-tronクワトロが発表になりました。発表の段階で明らかになった(主にスペック上の)変更点は以下のとおりです。

・ディーゼルエンジンを踏襲。
・エネルギー貯蔵装置は電動フライホイールからリチウムイオンバッテリーに変更。
・1周あたりエネルギー放出量は、4MJから6MJに変更(4段階あるうちの上から2つめ)。
・これまで3台エントリーしていたル・マンには2台を投入(グループ企業のポルシェも同様)。

Audi R18 e-tron quattro 2016 launch version
R18_2016_front.jpg
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アウディは「革新的な空力」と表現していますが、2015年仕様に比べてノーズが細く、高くなったのは一目瞭然です。細部が見づらいので、ちょっと明るくしてみました。

Audi R18 e-tron quattro 2016 launch version
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2015年のル・マン仕様はこちら。

Audi R18 e-tron quattro 2015 Le Mans 24h version
R18_2015_LDG_front.jpg
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極端に高いノーズになっているのが分かります(1)。ひと昔前のF1のトレンドを思い出させますね。ノーズの下にたくさん(しかもきれいな)空気を取り込んで、それをフロアで有効活用したい。モノコック〜ノーズの幅を狭くすると、フロントフェンダーとモノコック〜ノーズに挟まれた空間も広くなって、空力的には(前後とも)好都合。細く高いノーズを実現したところが、「革新的」と表現するゆえんでしょう。

ところで、モノコック前端(バルクヘッド)を細くするには、相応の策が必要です。なぜなら、エンプティボリュームと呼ばれる幅330mm、高さ350mmの断面を、ペダル面(スロットル全開位置)からステアリングホイールセンターの間に(車両中心線を対称に2つ)設けなければいけない規則があるからです。

ペダル位置(ドライバー着座位置)を後方に設けることができれば、エンプティボリュームの規定を満たしたうえでバルクヘッド断面を小さくでき、ノーズも細くできます。

empty_volume1.jpg
Motor Fan illustrated Vol.71 (モーターファン別冊)で使用した図をもとに作成)。

一方、ドライバー着座位置を(相対的に、も含め)後ろにできないと、エンプティボリュームが干渉して、バルクヘッド断面を小さくできません。

empty_volume2.jpg

大きく重たいディーゼルエンジンを搭載するアウディにとっては、ドライバーを後ろに座らせるのは難題なはずで、どのようにして解決したのか(エンジンをモノコック側に食い込ませた? フロントオーバーハングが短くなるのを覚悟で前車軸を前方に移動させた?……)が気になるところです。

2015年仕様に比べてキャノピーのコーナー部がスクエアになったように見えますが(2)、これはバルクヘッドの位置を高くしたのと関連しているでしょうか。フロントウィンドウテンプレートが正面から見えなければいけないとする規定を満たそうとした場合、バルクヘッドの位置が高くなるのと連動してテンプレートの位置も上がり、干渉を避けようとするとコーナーがスクエアになっていく傾向にあるようですので。コーナーのボリュームが増すのは空力的には歓迎できませんが、それよりもバルクヘッドの高さとノーズの細さを優先したのでしょう。

左右フェンダーをつなぐプレート(3)は前から見た際にサスペンションアーム類が見えてはいけないとする規定を満たすためで、考え方としては2015年仕様と同じでしょう。ただし、後方のパネル(4)と合わせて、全体に位置が高くなっています。

フロントフェンダーには内/外にフェンス状の処理が施されています。横から見てスクエアな形状と合わせて、フェンダー上面開口部からの「吸い出し」を抑える(ドラッグ低減を優先)考えでしょうか。

ステアリング位置が右なのはこれまで同様(6)。ワイパーのデフォルト位置が変更になっています(7)。赤の差し色がいいですね。

角度を変えて新旧を眺めてみると、フロントセクションの激変ぶりが目につきます。

Audi R18 e-tron quattro 2016 launch version
R18_2016_side.jpg
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Audi R18 e-tron quattro 2015 Le Mans 24h version
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リヤはこんなふう。

Audi R18 e-tron quattro 2016 launch version
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Audi R18 e-tron quattro 2015 Le Mans 24h version
R18_2015_LDG_rear.jpg
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2015年仕様のリヤビューミラーはフロントフェンダーに埋まっていましたが、2016年仕様はステーをフェンダーと一体化させた設計(8)。リヤフェンダーに義務づけられている開口部は、上面ではなく内側を踏襲(9)。リヤウイング翼端板の形状がユニークです(10)。リヤランプのグラフィックは、量産車とのつながりを感じさせますね(11)。リヤフェンダー後端開口部の処理は、まだ見せたくないのでしょう。公開された写真では、完全にふさがれています(12)。

参考までに、2015年仕様と2014年仕様の新旧比較はこちら↓
http://serakota.blog.so-net.ne.jp/2015-04-05

2011年から2014年までの変遷はこちら↓
http://serakota.blog.so-net.ne.jp/2013-12-08

振り返ってみると、ずいぶん変化していますね。

http://www.facebook.com/serakota

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コメント 6

gcj

ドライバーにGT-R LMのような窮屈な感じで座ってもらって
ペダル面-ステアリング間の距離を短くしてエンプティボリュームの長さを短くすることは出来るのでしょうか?

by gcj (2015-11-29 19:19) 

世良耕太

可能だと思いますが、コクピット脱出時間の規定もありますし、気になるところですね。真相解明していきましょう。
by 世良耕太 (2015-11-29 22:20) 

dome-s101judd

コンセプトは違いますが、R15と同じようなとんがりを
感じます。この時期に明らかにしたということは色々思惑があるのでしょう。
かつてのプジョーと同じようなことにならなければ良いのですが。

by dome-s101judd (2015-12-01 03:15) 

世良耕太

開幕までにうまくまとめることができるかどうか、腕の見せどころですね。
by 世良耕太 (2015-12-01 23:59) 

通りすがり

私が最も驚いたのはフロントフェンダーの形状ですね。
アンダーカットに関してはポルシェが後半戦仕様で先鞭をつけたものだと思いますが、このアウディの新型は上部がほぼ完全にフラットで、本当にまるで船の舳先のようです。石油タンカーですね、このずんぐりむっくりは。
こういう造形になってしまうのはやはりフェンダー開口部からの吸い出しを抑制したい、しかしドラッグも減らしたいという二律背反のためだと思いますが、であれば開口部を側面に移すということでは駄目なのでしょうか? そうすれば昔のトヨタTS020のようにフェンダーの幅を狭くできるし、それによって前面投影面積もドラッグも減ると思うのですが。
by 通りすがり (2015-12-09 14:27) 

世良耕太

側面に開口部を設けた方が得という意見も聞きますが、ステアした際に流れが変わるのを嫌っているのかもしれません。内側に排出する流れの制御に手間が掛かるそうですので。
でも、どこかが内側開口をやり始め、結果を見せ始めたら、一気に(トレンドとしての)流れが変わる可能性はありそうですね。
by 世良耕太 (2015-12-10 18:26) 

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